飯がうまい

例えばごはんが美味しかったりしたことを思いついたまま書きます

木古館(きんこんかん)

近頃は週1ペースでオープンハウスの受付バイトをしている。

朝9時に不動産屋に行き、営業担当の社員の車で現場の新築物件或いは中古物件のオープンハウスに連れていってもらう。その日の担当物件について軽くレクチャーを受け、あとは物件の前にテーブルと椅子を出して内覧のお客さんが来るのを待つ。

待つ。ひたすら待つ。客が来たら担当営業の社員に電話して来てもらう。仕事はほとんどそれだけの恐ろしく簡単なアルバイトだ。辛いことと言ったら、家の前に日除けが無い物件だと日差しが辛いくらいか。

どの物件担当になるかはその日になるまでわからない。私は毎度毎度どこの物件担当になるかを少しだけ楽しみにしている。知らない町に行くのは楽しい。そこがどんな街で、近くに何ていう駅があって、こんな公園があって、こんなお店があって…。お昼ご飯は近くのよさ気なお店に入って食べるのだが、これが何より楽しみである。何てことないラーメン屋でも、「地元密着感」のある店舗はなんとなくタマラナイ感じがする。味よりも雰囲気を楽しむ感じ。というわけで、私は今のところこのアルバイトを気に入っている。

先日行ったオープンハウスは、これまでにないくらい駅から遠く、これまでにないくらい周りに何もない住宅地だった。周りに飲食店は見当たらず、15分歩いて一番近いコンビニでお昼を調達するものやむ無し、とややガッカリしていたところ、担当物件の目と鼻の先に不思議な店があるのを発見した。

外から見ると大きな蔵で、「木古館」と書いた大きな看板が掲げられていた。道路には「営業中」という旗が昇っていたためどうやら飲食店のようだと見え、近いし面白そうだしとにかく入ってみることにした。

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店に入ってみるとやや予想通り、しかしやはりその独特な雰囲気に圧倒される感覚があった。要するに木材を加工していろいろなものを作っている、というのはわかるのだが、この店が飲食店であるという事に違和感を感じた。

軽く挨拶をしつつ店に入ってとりあえず座る。椅子もテーブルもどうやら手作りらしい。テーブルの上のメニューを見ると、ランチメニュー「鶏の照り焼き定食」一つだけのようだ。若い店員さんにそれを注文し、座ったまま店の中を眺める。

「変な店でしょ、料理出来るまで店の中じっくり見てたらいいよ」

店主らしきおじさんがニコニコと話しかけてきた。「ここは何のお店なんですか?」と漠然と聞くと、「何ってことは無いけどね、俺が好きでやってるだけだから」とぶっきらぼうに返ってきた。

客は私一人だけのようだったので、気兼ねなく店の中を散策することにした。言っちゃ悪いけど、こんなへんぴな場所にあるお客さんも少なそうな変な店にしてはかなり広い。店の中はテーブルと椅子が並ぶ大広場と、3つ4つの囲炉裏のある小部屋に別れていた。大広場には所狭しと木材の家具やら置物やらよくわからないものが並んでいる。奥に進むと小さなライブ・ステージがあり、どうやら夜になるとここで歌を聞きながら食事ができたりもするようだ。

「お待たせしましたー」

食事が来た。

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出てきた料理はいい意味で期待を裏切って来た。安心感のある鶏の照り焼き定食。

なにもかもおいしかった。料理が美味しかったのは勿論だが、木の香りが漂う蔵の中で食べる料理は一段とおいしく感じる。味噌汁のニラはシャキシャキで、瓜の浅漬はシャキッとさわやかで、味の濃い豆腐には刻んだミョウガが乗っている。鶏肉は柔らかく、サラダもおいしい。ご飯のおかわりは無料と聞いて、早速おかわりを注文した。

 

思いの外満足な昼食だった。これで午後のバイトも頑張れる。まぁ頑張るようなバイトじゃないけど。